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2次曲線(数学III)

楕円時計を作ったら

〜針の先端がいちばん速いのは何時?〜

このノートで考えること

もし楕円のかたちをした時計があって,その縁(ふち)に合わせて伸び縮みしながら回る針を作ったら,針の先端がいちばん速くなるのは,どの位置でしょうか。

楕円時計の設定

楕円のかたちをした時計
楕円のかたちをした時計。針は中心から縁まで伸び,回りながら長さが伸び縮みする。

角度の取り方

本動画では,時計に合わせて角度 θ\theta12時の方向から時計回りに測る。

このとき,中心から角度 θ\theta の方向に長さ rr だけ伸びた先端の座標は

x=rsinθ,y=rcosθx = r\sin\theta, \quad y = r\cos\theta
楕円上の針の先端と,横成分 r sinθ・縦成分 r cosθ
12時の方向から測った角度 θ の向きに,長さ r だけ伸びた針。先端の横の位置が r sinθ,縦の位置が r cosθ。

設定値

記号意味
aa横の半径(3時・9時方向)10 cm
bb縦の半径(12時・6時方向)20 cm
ω\omega角速度(長針,1時間で1周)66^{\circ}/分

ストップウォッチの秒針は ω=6\omega = 6^{\circ}/秒(1分で1周)を使用。

針の長さ r(θ)r(\theta) の導出

楕円の方程式から導出

楕円の方程式 x2a2+y2b2=1\dfrac{x^2}{a^2} + \dfrac{y^2}{b^2} = 1x=rsinθx = r\sin\thetay=rcosθy = r\cos\theta を代入:

r2sin2θa2+r2cos2θb2=1\frac{r^2\sin^2\theta}{a^2} + \frac{r^2\cos^2\theta}{b^2} = 1

rr について解くと

r(θ)=abb2sin2θ+a2cos2θ\boxed{r(\theta) = \frac{ab}{\sqrt{b^2\sin^2\theta + a^2\cos^2\theta}}}

ここで分母の中身に名前をつけ,D=b2sin2θ+a2cos2θD = b^2\sin^2\theta + a^2\cos^2\theta と置くと r=abDr = \dfrac{ab}{\sqrt{D}} と書ける。以降この DD を使う。

a=10, b=20a = 10,\ b = 20 での値

位置θ\thetarr
12時00^{\circ}200/100=20200/\sqrt{100} = 20 cm(最長)
3時9090^{\circ}200/400=10200/\sqrt{400} = 10 cm(最短)

楕円の方程式: x2102+y2202=1\dfrac{x^2}{10^2} + \dfrac{y^2}{20^2} = 1,すなわち x2100+y2400=1\dfrac{x^2}{100} + \dfrac{y^2}{400} = 1

先端の速さ v(θ)v(\theta) の導出

2つの速度成分

針が角速度 ω\omega で回転しているとき,先端の速度は2つの直交成分に分解できる:

先端の速度の分解:回転成分 rω と伸縮成分 (dr/dθ)ω,その合成 v
先端の速度は2つの向きに分かれる。針に垂直な回転成分 rω と,針の向きの伸縮成分 (dr/dθ)ω。この2つを合わせたものが速さ v。

連鎖律による伸縮速度

rrθ\theta の関数として求めたので,時間微分は連鎖律で:

drdt=drdθdθdt=drdθω\boxed{\frac{dr}{dt} = \frac{dr}{d\theta} \cdot \frac{d\theta}{dt} = \frac{dr}{d\theta} \cdot \omega}

θ\theta は単位時間あたり ω\omega ずつ変わるので,dr/dθdr/d\thetaω\omega をかければ伸縮速度が得られる。

三平方の定理による合成

回転成分と伸縮成分は直角なので:

v=(rω)2+(drdθω)2=ωr2+(drdθ)2v = \sqrt{(r\omega)^2 + \left(\frac{dr}{d\theta}\omega\right)^2} = \omega\sqrt{r^2 + \left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2}

dr/dθdr/d\theta の計算

さきほどの D=b2sin2θ+a2cos2θD = b^2\sin^2\theta + a^2\cos^2\thetar=ab/Dr=ab/\sqrt{D} の分母の中身)を θ\theta で微分すると,

dDdθ=(b2a2)sin2θ\frac{dD}{d\theta} = (b^2 - a^2)\sin 2\theta

これを使って r=abD1/2r = ab\,D^{-1/2} を微分すると,

drdθ=ab(b2a2)sin2θ2D3/2\boxed{\frac{dr}{d\theta} = -\frac{ab(b^2 - a^2)\sin 2\theta}{2D^{3/2}}}

a=10,b=20a = 10, b = 20: b2a2=300b^2 - a^2 = 300drdθ=30000sin2θD3/2\dfrac{dr}{d\theta} = -\dfrac{30000\sin 2\theta}{D^{3/2}}

θ=0,90\theta = 0^{\circ}, 90^{\circ}(12時・3時)では sin2θ=0\sin 2\theta = 0dr/dθ=0dr/d\theta = 0v=rωv = r\omega

最速点は12時ではない

数値計算の結果:

θ\theta位置rr (cm)v/ωv/\omega (cm)備考
00^{\circ}12時20.020.020.020.0最速ではない
15\mathbf{15^{\circ}}12時の少し後18.318.321.5\approx 21.5最速
90\mathbf{90^{\circ}}3時10.010.010.010.0最遅
345\mathbf{345^{\circ}}12時の少し前18.318.321.5\approx 21.5最速

理由(手計算で確かめる)

12時ちょうどでは dr/dθ=0dr/d\theta = 0(伸縮が止まる瞬間)で,速さは rω=bωr\omega = b\omega。一見ここが最速に見える。だが少しずらすと,rr はわずかに減る一方で,伸縮の速さ dr/dθdr/d\theta が0から立ち上がる。どちらが勝つかを,速さの2乗

g(θ)=(vω)2=r2+(drdθ)2g(\theta) = \left(\frac{v}{\omega}\right)^2 = r^2 + \left(\frac{dr}{d\theta}\right)^2

θ=0\theta = 0 のまわりで展開して調べる。Da2+(b2a2)θ2D \approx a^2 + (b^2-a^2)\theta^2 から rb(1b2a22a2θ2)r \approx b\left(1 - \dfrac{b^2-a^2}{2a^2}\theta^2\right)drdθb(b2a2)a2θ\dfrac{dr}{d\theta} \approx -\dfrac{b(b^2-a^2)}{a^2}\theta となり,

g(θ)b2+b2(b2a2)(b22a2)a4θ2g(\theta) \approx b^2 + \frac{b^2(b^2-a^2)(b^2-2a^2)}{a^4}\,\theta^2

θ2\theta^2 の係数の符号は(b>ab>a なので)b22a2b^2 - 2a^2 で決まる:

a=10a=10 なら境目は b=21014.1b = \sqrt{2}\cdot 10 \approx 14.1 cm。楕円時計(b=20b=20)はこれを超えるので,12時は最速ではない。投げたボールが頂点で一瞬遅くなるのと同じで,長い軸の先端(12時)は速さの谷になっている。

体験速度グラフ:楕円の形を変えてみる

b=10 で円(速度一定)/ b を大きくすると縦長の楕円。右図は楕円の形と最速点の位置。

スライダーで b を動かすと速度曲線が変わります。b = 10(円)では水平線(速度一定)に,b を大きくすると12時の前後に2つの山が現れ,最速点が12時からずれていきます。

最速角度を求める

最速の角度は g(θ)=0g'(\theta)=0 をきちんと解いて得られる。計算しやすいよう,ここでは3時の方向(x軸)から測った角度 φ\varphi をとり,u=sin2φu=\sin^2\varphi と置くと,極値条件は次の形にまとまる:

u=sin2φ=b2(a22b2)2(a2b2)(a2+b2)u = \sin^2\varphi = \frac{b^2(a^2 - 2b^2)}{2(a^2 - b^2)(a^2 + b^2)}

a=10, b=20a=10,\ b=20 を入れると u=14150.933u = \dfrac{14}{15} \approx 0.933,すなわち φ75\varphi \approx 75^{\circ}。これを12時から測り直すと 9075=1590^{\circ}-75^{\circ} = 15^{\circ}。先ほどの数値計算の「12時の少し後 1515^{\circ}」とぴったり一致する。

楕円の潰れ具合による変化

手計算でわかったとおり,最速点が12時からずれるのは b>2ab > \sqrt{2}\,a のときだけ。a=10a=10 を固定して bb を変えると:

縦半径 bb最速の位置v(12)/ωv(12時)/\omegavmax/ωv_{\max}/\omega
1212<14.1<14.112時12121212
14.114.1(境目)12時14.114.114.114.1
151512時のすぐ横151515.015.0(+0.2%)
202012時の少し横202021.521.5(+7.6%)
505012時の横5050102102(+104%)

円(b=a=10b=a=10)に近いほど速さは一定に近づき,縦に長い楕円ほど12時とのずれが大きくなる。

楕円タイミングゲーム

楕円軌道上を一定角速度で動く対象に,特定位置でタイミングを合わせるゲームを考える。

ミニゲーム楕円タイミングゲーム
BPM 128 | Perfect ±50ms | Good ±85ms | Miss ±120ms
Perfect: 0
Good: 0
Miss: 0

楕円 ← → 円

点が頂点に来た瞬間にクリック(またはスペースキー)。スライダーを「円」に近づけると,どの位置でも同じ速さになり難易度が一定に。楕円のままだと,3時・9時はゆっくり,12時・6時は速く,12時の直前直後はフェイントがかかります。